アメリカの留学生活の中で、一番印象に残っているのはホームステイで感じた文化の違いです。日本を出て初めてアメリカの家庭で生活することになり、毎日の小さな出来事が驚きや発見の連続でした。日本では当たり前だと思っていた習慣が、アメリカでは全く違う形をしていて、最初は戸惑いながらも少しずつ慣れていきました。
まず大きな違いを感じたのは食事のスタイルです。日本では家族全員で同じ時間に夕食を囲むのが普通ですが、アメリカの家庭ではそれぞれの予定に合わせて食事を取ることが多くありました。ある日は家族が全員揃うこともありましたが、別の日には私とホストマザーだけで夕食を食べたり、ホストブラザーは外で友達と食べたりとバラバラでした。それでも「冷蔵庫に食べたいものがあるから自由に食べてね」と声をかけてもらえたことで、家族の一員として受け入れてもらえた安心感がありました。
食事の内容も新鮮でした。日本ではご飯と味噌汁を中心に野菜や魚が並ぶことが多いですが、ホストファミリーの食卓にはピザやパスタ、ハンバーガーが登場することが多かったです。最初は油っぽく感じることもありましたが、慣れてくるとそれも楽しみのひとつになりました。ときどきホストマザーが「今日は特別にスープを作ったのよ」と野菜たっぷりの料理を出してくれると、どこか日本の家庭料理を思い出してホッとしたのを覚えています。
次に驚いたのは家族の距離感です。日本では「遠慮すること」が礼儀の一つだと考えられがちですが、アメリカでは自分の意見をはっきり伝えることが当たり前でした。夕食のときに「今日は何をしたの?」と聞かれると、ホストシスターは学校での出来事を細かく話していました。私も最初は簡単な返事しかできませんでしたが、少しずつ「今日は授業で日本文化について発表したよ」と自分から話すようになりました。そのときの「Good job!」という反応がとても嬉しく、自分も積極的に会話に参加しようという気持ちが強まりました。
また、プライベートの扱い方も大きく違いました。ホストファミリーは「自分の部屋は自分のスペース」とはっきり考えていて、家族であっても勝手に部屋に入ることはありませんでした。日本では家族が部屋を訪ねてきて雑談することも自然ですが、アメリカでは一度ドアをノックしてから入るのが礼儀でした。この習慣は最初は不思議に感じましたが、だんだんと「お互いの時間や空間を尊重すること」の大切さを理解するようになりました。
さらに印象に残っているのは、家族がとてもフレンドリーで「ありがとう」をよく言うことです。小さなことでも「Thanks!」や「I appreciate it!」と伝えてくれました。日本では家族の中で感謝の言葉を口にすることが少ないと感じていたので、日常的に言葉で感謝を表す姿勢はとても新鮮でした。そしてその習慣に触れることで、自分も「ありがとう」をもっと口に出すようになり、人との関係がより温かくなることを体験しました。
このように、ボストンの語学学校へ留学中、ホームステイでの生活は毎日が文化の違いに気づく時間でした。最初は戸惑いもありましたが、その違いこそが学びになり、自分の考え方や習慣を広げてくれるきっかけになりました。日本とアメリカ、どちらが正しいということではなく、それぞれの良さがあると知ったことは、今でも私の財産になっています。留学生活を通して学んだのは、言葉だけでなく「文化を理解し合うこと」の大切さだったのだと思います。